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【INTERVIEW】「地元の私たちも知らない知多半島を、教えてほしい」 CROSS ART TOKONAME 代表 片岡さんが抱き続けたアーティスト・イン・レジデンス・プログラム・TOUCH! TOKONAME実現への想い

【INTERVIEW】「地元の私たちも知らない知多半島を、教えてほしい」 CROSS ART TOKONAME 代表 片岡さんが抱き続けたアーティスト・イン・レジデンス・プログラム・TOUCH! TOKONAME実現への想い 常滑市
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2024年4月1日に市制70周年を迎える愛知県常滑市。その特別記念事業であるアーティスト・イン・レジデンス・プログラム「TOUCH! TOKONAME」を実施する市民団体CROSS ART TOKONAMEの代表・片岡麻美さんにインタビュー。片岡さんの「TOUCH! TOKONAME」、そして常滑に対する想いを深掘りする。

片岡さんが「TOUCH! TOKONAME」開催を志したきっかけ

CROSS ART TOKONAME 代表の片岡麻美さん / photo by 金子修平
CROSS ART TOKONAME 代表の片岡麻美さん / photo by 金子修平

常滑市制70周年特別記念事業として2024年9月12日から10月31日の50日間にわたって行われる、アーティスト・イン・レジデンス・プログラム「TOUCH! TOKONAME」。
アーティスト・イン・イン・レジデンスとはアーティストを土地へ招き、平常と異なる場所に滞在しながら作品制作を行うことを支援する活動だ。

「TOUCH! TOKONAME」では国内外のアーティストを常滑に招き、その滞在制作を支援する。
実際に市民とアーティストが「触れる」「触れ合う」「手を取り合う」ことでお互いに新しい気づきを得たり、地域への愛着を感じてもらうことが目的だ。

実際に運営を行うのが市民団体であるCROSS ART TOKONAME。その代表である片岡さんは、なぜアーティスト・イン・レジデンス・プログラムを開催しようと考えたのだろうか。
その背景には片岡さん自身のルーツである焼きものへの関心や、プログラム開催を志すきっかけとなった出来事があるのだとという。

きっかけは、「愛知展」。IWCAT復活へのつのる想い

片岡さんはIWCATの活動を知っていくうちに、常滑でのアーティスト・イン・レジデンスを復活させたいと思うようになったそうだ。 / photo by 金子修平
片岡さんはIWCATの活動を知っていくうちに、常滑でのアーティスト・イン・レジデンスを復活させたいと思うようになったそうだ。 / photo by 金子修平

ーなぜ、アーティスト・イン・レジデンス・プログラム「TOUCH! TOKONAME」をはじめようと思ったのですか?

片岡さん:「もともと国際文化交流団体に勤務していたこともあり、国際文化交流そのものに関心があったんです。また、祖父が常滑で製陶所を営んでいたという背景もあり、常滑の焼きものにも興味を持っていました。

アーティスト・イン・レジデンス・プログラムを開催したいと考え始めたのは、「トコトコなめ子」というアカウントでInstagramをはじめて、IWCAT(とこなめ国際やきものホームステイ)のことを少しずつ知るようになってからのことです。

IWCATという活動が常滑で行われていたことは2013年頃に知りました。しかしその時はすでに活動事態は終了しており、「かつてこんな面白い活動があったんだな」という程度の関心でした。

自身が常滑のルーツを自覚し、地域に関する活動をしたいと思った直接的なきっかけは2016年頃です。D&Department Tokyo「愛知展」を開催し、愛知県内のさまざまなものづくりや見どころを紹介する中に常滑の展示もあり、自分のルーツである常滑の“ものづくり”の面白さに興味を持ったんです。

そこから自身でInstagramのアカウントを開設して、個人で常滑の魅力を発信する活動を始めました。
Instagram上での活動を通じて常滑の関係者と会ううちに、IWCATについての話を聞くことが増えてきました。そこで、発信活動に加えてアーティスト・イン・レジデンス・プログラムについてのリサーチも並行して行っていました。それが2017年頃のことです。次第に、その活動を「また復活させたい」と思うようになりました。」

ルーツは、焼きもののまちに。

土管坂の景観 / 写真提供:CROSS ART TOKONAME
土管坂の景観 / 写真提供:CROSS ART TOKONAME

ーもともと国際文化交流に関心があり、焼きものへの関心があったとのことですが、その素地はどういったものだったのでしょうか?

片岡さん:「祖父が製陶所を営んでいたこともあり、ルーツとしては自分も焼きもののまちの人間であるという感覚を持っていました。

学生の頃、エジプトに住んでいたのですが、そこで一緒に住んでいたルームメイトが焼きもの好きの方だったんです。
専門は中東の歴史研究だったので、単純な興味という感じではあったのですが、ルームメイトの影響もあり、どんどん焼きものが好きになりました。
現地の陶芸家さんや陶芸を学んでいる若者との交流もあり、そこから自分のルーツを振り返るようなイメージで、常滑への興味が高まっていきました。

常滑のものづくりのクオリティに驚くと共に、エジプトにいる彼らが常滑にきたら学ぶものがたくさんあるのではないか、いつか彼らを常滑に招きたいという想いが芽生えたんです。

その経験が、その後の体験を経て、現在の活動につながっていると思います。
いつかは彼らを呼びたいというのも、密かな野望です。」

体当たりでの仲間集め、実現までのいばらの道のり

片岡さんはInstagramで「トコトコなめ子」として常滑の魅力をPRする活動も行っている。 / photo by 金子修平
片岡さんはInstagramで「トコトコなめ子」として常滑の魅力をPRする活動も行っている。 / photo by 金子修平

国際文化交流への関心や焼きものへの興味から、自身のルーツである常滑に魅かれていったという片岡さん。
Instagram上での「トコトコなめ子」としての活動のなかで、IWCAT復活への想いがつのり、導かれるようにしてアーティスト・インレジデンス・プログラム開催への道を歩み出すこととなる。
しかし、その道のりは決して平坦なものではなかったという。

実現まではいばらの道のり

2024年1月25日開催 説明会の様子 / 写真提供:CROSS ART TOKONAME
2024年1月21日開催 説明会の様子 / 写真提供:CROSS ART TOKONAME

ー実現までの道のりはどのようなものだったのでしょうか?

片岡さん:「常滑に帰った際に色々な人にアーティスト・イン・レジデンスプログラム開催への思いを発信していく中で、「私もやりたい」という仲間ができました。
現在はイギリスに移住しているので運営メンバーではないのですが、同世代で初期の頃一緒に活動していてくれていて、それが本当にありがたかったです。

2017年頃は、その方と一緒に常滑の魅力を発信するローカルWebメディアの立ち上げを考えていたんです。常滑焼の作家さんにインタビューをしたいとずっと考えていました。
それは実現はしませんでしたが、今回のプロジェクトに繋がっています。

その後も彼女と一緒に実現へ向けてミーティングや準備を重ねながら、いろいろな人に話を聞いたりする日々が続きました。それが2018〜2020年頃のことです。

ですが、その後新型コロナウイルス感染症の流行もあり、自身のライフスタイルが大きく変わる出来事などもあって、動くことができない期間が長く続いていました。
しかしコロナ禍でも、アーティスト・イン・レジデンス関係のセミナーや、アートプロジェクトを企画する学校に通ったりしていました。低空飛行の時期ではありましたが、「自分もいつかやるぞ」という気持ちは絶やさずにいたんです。

声がかかったのはちょうどそんな心の準備をしていた最中、コロナが落ち着いてきたタイミングのことでした。
常滑の方から「今度70周年の特別記念事業をやるので応募してみたら?」という話があったんです。

ちょうど長年一緒に伴走してきた彼女がイギリスに移住し、自分自身、今後どうしようかなと思っていた時期でもありましたが、「じゃあ、このタイミングでやってみよう」と思い立ったんです。

そこからはあれよあれよと話が進み、ここ1年で急速に話が進んだイメージです。今も仲間たちと忙しい日々を送っています。」

体当たりでの仲間集め

「これまで体当たりで、地道にお会いしてお話してきた方との交流が今に繋がっているのだと思います。」 / photo by 金子修平
「これまで体当たりで、地道にお会いしてお話してきた方との交流が今に繋がっているのだと思います。」 / photo by 金子修平

ー仲間は何人くらいいらっしゃるのですか?

片岡さん:「相当巻き込んでいるので、仲間は常滑内外にたくさんいます(笑)。
ありがたいことに、「何かあれば協力するよ」といってくださる方がたくさんいます。

運営メンバーは、現在8人です。コロナ前にご連絡をしたりお会いした方々が運営メンバーになってくれています。
ゲストハウスを運営している方や、高校の先生、観光協会で広報をしている方、常滑の陶芸家、現代アートのアーティストなど、さまざまなことをしているメンバーがいます。

Webサイトのインタビューなどを読んで、興味を持った方がいたら積極的にメールやSNSを送ったり、常滑に帰った際に声をかけていました。
これまで体当たりで、地道にお会いしてお話してきた方との交流が今に繋がっているのだと思います。」

ー運営メンバーとの会議はどうやって行っているのでしょうか?

片岡さん:「現在東京に住んでいますが、ほとんどが常滑の方なので、2週に1度のオンラインが主です。月に1度は常滑に帰るようにしているので、帰った際にはそこで会うことができるように調整しています。

すぐに会うことがなかなかできないので、仲間には申し訳ないとも思いつつ、忙しい毎日をなんとか根性でこなしています。
今回、600名以上のアーティストから応募があったことで、よりコミュニケーションは加速しているような気がしますね。
とても一人では回せないような仕事量も、みなさんが助けてくれるからなんとか回っています。

忙しい毎日での苦しさも、実現に少しずつ近づいているからこそ嬉しいことばかりです。」

招へいアーティストに見てほしい常滑の景色

片岡さんは現在、現在、仲間とともに準備のために忙しい毎日を送っているそうだ。 / photo by 金子修平
片岡さんは現在、現在、仲間とともに準備のために忙しい毎日を送っているそうだ。 / photo by 金子修平

コロナ禍での低空飛行を余儀なくされながらも、希望の火を絶やさずに持ち続けた片岡さんだが、体当たりの行動力で得た多くの仲間たちの協力もあり、常滑市制70周年特別記念事業としてアーティスト・インレジデンス・プログラム「TOUCH! TOKONAME」の開催を実現。現在、仲間とともに準備のために忙しい毎日を送っているそうだ。
そんな片岡さんは、今回のアーティスト・イン・レジデンス・プログラムを通じて、招へいアーティストや市民にどのような体験をしてほしいと考えているのだろうか。

中長期の滞在だからこそ見えてくる常滑の魅力

中長期での滞在だからこそ見えてくる、一日の観光では見えない常滑の魅力を発見してほしいと思っています。 / photo by 金子修平
中長期での滞在だからこそ見えてくる、一日の観光では見えない常滑の魅力を発見してほしいと思っています。 / photo by 金子修平

ー「TOUCH! TOKONAME」で招いたアーティストに常滑でどんな体験をしてほしいですか?

片岡さん:「まず第一に焼きものでつくられた町の景観を見てほしいと思います。常滑には、いろんな景色があります。そんないろんな景色を見てほしいと思いますね。

例えば、私は奥条出身なので、奥条周辺で無作為に壁や地面に埋め込まれている焼きものを探すのが好きです。また、坂井海岸周辺の景色も大好きです。ですが、一日の観光ではどうしてもやきもの散歩道だけで終わってしまいがちです。

だからこそ、中長期での滞在だからこそ見えてくる、一日の観光では見えない常滑の魅力を発見してほしいと思っています。
それは、もしかしたら私たちが気づいていない魅力だってあるかもしれないですよね。
常滑や知多半島の外からの視点で、まだ発見されていない知多半島の魅力を教えてほしいと思います。

それから、焼き物のまちで暮らす人々の生活を見てほしいとも考えています。
例えば、普通の家でも急須が並んでいて、お茶によって使い分けをする家があったり、今でも何かの時に抹茶をたてたりする家もあったりする。そういった生活があることを知ってほしいと考えています。

そしてもちろん、ネガティブなことも含めて、様々な視点から、地元の私たちも知らない知多半島を、教えてほしいとも思っていますね。」

変わっていってしまう、常滑ならではの景観を後世に残したい

現在ではINAXライブミュージアムの展示窯なっている片岡さんの祖父の窯 / 提供:CROSS ART TOKONAME
現在ではINAXライブミュージアムの展示窯なっている片岡さんの祖父の窯 / 提供:CROSS ART TOKONAME

ー片岡さんにとっての常滑でお気に入りの場所はありますか?

片岡さん:「お気に入りの場所は、祖父の窯です。
私の祖父はかつて製陶所を営んでいて、土管や焼酎瓶を焼く煙突窯を持っていました。私が生まれる前に工場を畳んでしまったので、私自身は祖父の窯が稼働しているところは見たことがありません。

幸い祖父の窯はINAXライブミュージアムの展示窯として残していただいています。これは恵まれていると思います。残してくれたからこそ、私は祖父の仕事場を見ることができました。そして、祖父の窯は私にとってのアイデンティティでもあるんです。

窯は耐震的な面で管理や維持が難しく、他に転用することもなかなかしにくいものです。だから常滑の窯は煙突窯を中心に、次々に取り壊されている現状があります。杉江製陶の見本室タイルのクラウドファンディング等、色々な方が動いてくださっています。

昔の窯やタイルがなくなっていく中で、常滑の景観も少しずつ変わっていかざるを得ません。そんな景観や素材を、アートという形で何かに使ってもらえたり、映像で残したりすることができたら、とも考えています。

それから、共栄窯が素敵だと思います。
窯の中の景色が好きで、釉薬や灰がこびりついている窯内部の壁面を見ると、歴史や記憶がそこにあるような気がするんです。

私自身、まだまだ知らないことがたくさんあるので、招へいアーティストや、市民のみなさんのお気に入りの場所も教えてほしいと思いますね。」

ーCROSS ART TOKONAMEとして、また片岡さん個人として今後やっていきたいことはありますか?

片岡さん:「アーティスト・イン・レジデンス・プロジェクトでの活動も今後続けていきたいと思っています。
そのほかにも、常滑や知多半島のものづくりを知ってもらえるような活動をしていきたいと考えています。」

「TOUCH! TOKONAME」は2024年9月12日よりスタート

2024年3月15日開催 招へいアーティスト審査会議の様子 / 写真提供:CROSS ART TOKONAME
2024年3月15日開催 招へいアーティスト審査会議の様子 / 写真提供:CROSS ART TOKONAME

市民団体CROSS ART TOKONAMEが主催するアーティスト・イン・レジデンス・プロジェクト「TOUCH! TOKONAME」は4月から本格始動。
現在行われているアーティスト審査、選定が終わるといよいよ3名の招へいアーティストが発表される予定。5月には市民向けの企画説明会も控えている。
アーティストが滞在を開始する9月までの間にも、市民ダイアローグガイドマップづくり等のイベントを開催する。
CHITAZINEでは今後も継続して「TOUCH! TOKONAME」の模様を伝えていくのでお楽しみに。
興味のある方は常滑市民もそうでない方もぜひ、「TOUCH! TOKONAME」に参加してみてはいかがだろうか?

片岡麻美さんプロフィール

片岡麻美さん / photo by 金子修平
片岡麻美さん / photo by 金子修平

祖父が常滑で製陶所を営んでいたことから、自身のルーツである常滑に興味を持つ。
エジプト留学中のルームメイトの影響でものづくりに関心を持ち、D&Departmentの「愛知展」をきっかけにInstagramで「トコトコなめ子」名で故郷・常滑の魅力発信を開始する。発信を続ける中で、アーティスト・インレジデンス・プログラムを常滑で開催することを決意。
国際文化交流団体で勤務しながら、アートプロジェクトのセミナーや学校に通うコロナ禍での準備期間を経て、常滑市制70周年を機に地元の仲間とCROSS ART TOKONAMEを発足。
アーティスト・イン・レジデンス・プログラム「TOUCH!TOKONAME」が常滑市制70周年特別記念事業に採択され、2024年4月より事業を本格的にスタートする。

トコトコなめ子 Instagram

TOUCH! TOKONAME 概要

提供:CROSS ART TOKONAME
提供:CROSS ART TOKONAME

名称:常滑市制70周年特別記念事業 アーティスト・イン・レジデンス・プログラム「TOUCH!TOKONAME」
プログラム実施期間(全体):2024年4月1日~2025年3月31日
(アーティスト招へい):2024年9月12日~2024年10月31日
プログラム内容:常滑市内のゲストハウスに滞在し、市内の工房で創作活動等を行う他、市民との交流プログラムとして街案内、ホームステイ、オープンスタジオ、学校訪問プログラム、成果発表展などを行う予定。

CROSS ART TOKONAME について

常滑から見た伊勢湾 / 提供: CROSS ART TOKONAME
常滑から見た伊勢湾 / 提供: CROSS ART TOKONAME

「xARTでつくる共創のまち」をテーマに、常滑で育まれた産業や文化を大切にしながら、まちとアートの交差点として活動する市民団体。今回、常滑市が公募した2024年度常滑市制70周年特別記念事業で採択されたアーティスト・イン・レジデンス・プログラム「TOUCH!TOKONAME」を実施予定。

CROSS ART TOKONAME Instagram

団体情報

常滑の景色 / 提供:CROSS ART TOKONAME
常滑の景色 / 提供:CROSS ART TOKONAME

団体名:CROSS ART TOKONAME
常滑市制70周年特別記念事業 アーティスト・イン・レジデンス・プログラム
「TOUCH!TOKONAME」事務局
代表:片岡 麻美
E-mail: touch.tokoname@gmail.com

CROSS ART TOKONAME
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取材協力:CROSS ART TOKONAME・片岡麻美さん
取材・文・写真:金子修平

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